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番外編 バーバありがとう

「礼を言うのは俺の方だ。紗智とこうして巡り会えたのは未知のお陰だからな。紗智、那和、明日、早いんだ。そろそろ寝ろ。未知を休ませてやれ」 声が次第に遠のいていった。 「高行さん」紗智さんが慌ててドアに駆け寄ったけれど、もうそこには鞠家さんの姿はなかった。代わりに大きなくまのぬいぐるみが置いてあった。 鞠家さんが自分がいなくても寂しくないようにと、紗智さんにプレゼントした抱き枕だ。 それを大事そうに両手で抱えると、嬉しそうににっこりと微笑んだ。 「あんだかんだといって、ラブラブなのにね。素直じゃないのはどっちなんだろうね」 「那和、冷やかさないで!」 紗智さん、顔を真っ赤にしていた。 翌朝、目が覚めると惣一郎さんとお祖父ちゃんが並んで竹刀を振っていた。 何を話しているのかな? 一気になってパジャマの上に半纏を羽織って、両隣で熟睡する二人を起こさないようにそぉーとベットから抜け出した。 あっ、ママ‼」 「一太、早起きだね」 「うん‼」 トイレに起きた時に、大好きなじぃじとそうじぃじの姿を真っ先に見付けたのかな? 「寒くない?ジャンバー持ってこようか?」 「ぼくはだいしょうぶだよ。ママこそさむくない?あかちゃん、かぜひいたらたいへんだよ」 「ありがとう一太、心配してくれて」 「うん‼いちた、おにいちゃんだもの」 一太はその場にしゃがみこむと、目をキラキラと輝かせて、頬杖をついて竹刀を振る二人を眺めた。

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