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番外編 バーバありがとう

「火が消えたように静かだな」 一太は一週間ぶりに再開した幼稚園へ登園して今はいない。 遥香は橘さんと柚原さんと買い物に出掛けている。 「紗智と那和、二人の息子がいてくれるからこそ、家の中が賑やかで、笑いで溢れているのかも知れない。二人に感謝だな」 今まで兄貴と呼んでいた紗智さんにまでバーバと呼ばれてかなり嬉しかったみたい。 「うん、そうだね」上目遣いで彼を見上げると、にっこりと微笑み返された。 「紗智、仲直り出来るといいな」 「うん」 頷くと彼の顔が近付いてきて。 ちゅっ、と軽くおでこにキスをされた。 「那和、真沙哉とちゃんと会えればいいんだが。まぁ、茨木さんや親父、それに裕貴がいるから何とかなるだろう」 次は鼻先にちゅっ、とキスされて、あれよあれよというまにベットに押し倒されていた。 「は、はる、さん!」 手をグーにして小さい握り拳を作り、ポンポンと彼の胸を軽く叩いた。 「太惺も心望もお昼寝中だ。鬼より怖い橘もいない。いちゃつくなら今だろ?違うか?」 愉し気に見詰めていた眼差しが、熱っぽいものに変化していった。 ねぇ、遥琉さん、肝心なことを忘れてるよ。鬼より怖いのは橘さんだけじゃない。もう一人目を光らせている人が・・・・・ 背後からごほんとわざとらしく咳払いする声が聞こえてきて。彼の肩がびくっと大きく震えた。

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