828 / 3637
番外編 いちたとハルちゃんの、ママの記憶を取り戻せ‼大作戦‼
『ちょっと親父!』
『儂だけ除け者なんて、酷いじゃないか』
『順番通りに撮すから待っててってさっき言ったよ』
『あ?聞いてねぇぞ。一太、ハルちゃん、じぃじだぞ。二人とも見てるか?』
カメラに向かって手を振るのはもしかしてお義父さん?
さっきまでとうって変わって機嫌よく笑っていた。
『家の中を案内しよう。何か思い出すかも知れないからな』
お義父さんがカメラと共に移動をはじめた。客間に台所、離れを順番に回り、玄関から外に出ると、建物や庭を撮すように撮影担当の若い衆に指示した。
「オヤジ‼」外で忙しく動き回っていた男たちが手を止め、一斉に腰を九の字に曲げて挨拶をした。
『ここにいる連中はみな龍一家の構成員だ。全員未知さんの味方だ。面構え、覚えておくといい』
中庭から建物に戻ると縁側によいしょっと腰を下ろした。
『未知さんや、ここはお前さんの家だ。遥琉と喧嘩して、嫌気が差したらいつでも戻ってこい』
凍て空を見上げながら、ゆっくりと言葉を続けた。
『その時にゆっくりと昔の話しを聞かせてやる』
ちょうどそこで動画が止まった。
「余計な事を喋らないように釘をさしておかないとな」
彼の声がして振り返ると、広くて温かな胸の中にすっぽりと抱き締められていた。
「余計な事?」
「いゃあ、何でもない。独り言だ」
知られちゃまずいことでもあるのかな?顔を見上げると、
「ある訳ないだろう」
顔を真っ赤にしわざとらしく咳払いをしていた。
「そんなことよりも、何か思い出したか?」
ううん、首を横に振った。
「そっか。次は千里の番だ。何か思い出せればいいな」
「うん」
一太ごめんね。一生懸命頑張ってくれたのに。ママ、何も思い出すことが出来なかった。
ともだちにシェアしよう!