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番外編 いちたとハルちゃんの、ママの記憶を取り戻せ‼大作戦‼

「遥琉さん?」 「最初に指を指したのが秦さん。裕貴と那奈の父親だ。未知にとってはおじさんにあたる。次に指を指したのが、千里の旦那のーー」 「ささ、はら、さん………?そうだよ、笹原さんだ」 ごく自然にその名前が零れ落ちた。 「そうだ、当たり」 彼の目がうるうるしていた。 「僕ね、ちょっと恥ずかしがり屋の秦さんが好きだった。笹原さんに何度も助けて もらった。二人とも僕にすごくすごく優しくしてくれて………そうだ、思い出した」 彼がすぐに千里さんに連絡をしてくれた。 『播ちゃんのことを覚えていたって聞いて、それなら秦ちゃんのこともきっと覚えていると思っていたけど・・・・・そうなの。良かったわ。でも、遥琉、残念だったわね』 「別に」 口をへの字に曲げる彼。 自分の夫や子供達のことは何一つ思い出すことが出来なかったのに、何で笹原さんの名前はすんなりと、ごく自然に出てきたんだろう。 「まぁ、笹原も裕貴に負けないくらいシスコンだからな。仕方がない。千里、悪いが笹原に代わってくれるか?」 『生憎ダーリンは外出中』 くすっと千里さんが電話の向こうで悪戯っぽく笑った。 『あと、そうだ。那和ね、嫁として卯月の家で頑張ってるわよ。帰ってきたらちゃんと誉めてあげて』 「は?ガキじゃねぇんだ、いちいち誉める必要なんてないだろう」 『もう分かってないんだから。幾つになっても人は誉められれば嬉しいし、その分伸びるものよ。ねぇバーバ』 「あぁ~‼そう呼ぶな。背中がむず痒くなるんだ」 彼からスマホを渡された。 「誰か来たみたいだ。子供達が下で騒いでるから様子を見てくる」 脱兎の如く逃げるようにそそくさとあっという間にいなくなってしまった。

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