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番外編 千里さんの涙とほんとうの想い

「千里も橘と同じでおっかないからな。みっちりと説教されたんだろう」 「悪いのは俺だから。女に騙されているとも知らず、利用されているとも知らず、彼女に夢中になった」 「千里が日本刀を肩に担ぎ、数人の舎弟と共に乗り込んだんです。笹原さんの喉仏に刀を突き付け自分を取るか、その女を取るか迫ったんです」 橘さんの言葉を聞きながら、笹原さんの指先が自然と喉仏に触れた。 「千里は…………泣いていた」 笹原さんがポツリと呟いた。 「アタシは男だからあなたの子供を生むことが出来ない。そこにいる女が、心底あなたに惚れているなら、子供好きなあなたの子を生んでくれるなら、アタシが我慢すればいいだけ。黙認してきた。でもその女はあなたをはなから利用するため近づいたのよーー千里は女の正体に気付いていた。さすが、播本さんが見込んだだけはある」 笹原さんがふらふらと椅子から立ち上がると、窓に近付き、藍色の空にぼんやりと浮かぶ月を見上げた。 「俺は千里を傷付けてしまった。一番大切にしないといけない人を………」 悔しそうに唇を噛み締めた。 「千里はそんな柔な女じゃない。俺より何倍も強い橘の妹だぞ。それに千里は昇龍会の会長だ」 彼がスッと立ち上がり、笹原さんの側に静かに歩み寄った。 「笹原、ガキに罪はない。自分たちの子供として育てればいいんだよ。例え血が繋がってなくても愛情を注いでやればいいんだよ。俺と一太、それに裕貴と心と優真…………血が繋がってなくても親子になれるんだよ。心を入れ替えて千里と一からやり直せ」 「遥琉。いや、兄貴、すまない」 笹原さんが何度も彼に頭を下げていた。

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