839 / 3345

番外編 遥琉さん、ありがとう

「そうだ、お土産あるんだった」 スズっと鼻を啜りながら体を離すと、鞠家さんが持ってきた荷物を子供達の前にドサッとおいた。 「さっちゃん、もしかしてこれぜんぶ?」 「うん、そうだよ」 子供達の目が点になりしばし固まっていた。 「遥琉から好きなものを買えって小遣いをもらったんだ。でも、紗智は自分のものは何も買わず子供達の服や玩具を選んだ」 「好きなの買ったよ」 紗智さんが鈴の付いたカエルのキーホルダーを鞠家さんに見せた。 「無事に帰るって、ダジャレなのかな?よく分からないけど、一太とハルちゃん、マーのも買ってきた」 嬉しそうにお土産を子供達に配り始めた。 太惺と心望には小さなかわいらしい靴と、クマの着ぐるみのパジャマ。 「ありがとう紗智さん」 「うん!」 ニコニコの笑顔を見せてくれた。 「じゃあ、橘、妻を頼む」 それからわずか30分後、彼から呼び出された鞠家さんが慌ただしく出掛けていった。 「やっぱりマーの匂い・・・・・好き」 背中にぎゅっ、としがみつき嬉しそうに顔を擦り付ける紗智さん。 子供達が寝静まった頃合いを見図り、ベットにゴソゴソと潜り込んできた。 「バーバに見つかったら間違いなく怒られるね」 「子供には焼きもちを妬かないよ。大丈夫だよ」 「それなら良かった」 安心したのか紗智さんがにっこりと微笑んだ。 それからしばらく時間が経過して。 「ねぇ、マー」 夜の静寂に包まれた寝室に射し込む月明かりをぼんやりと眺めていたら紗智さんに声を掛けられた。

ともだちにシェアしよう!