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番外編 幸せの色

千里の尻に敷かれるのが一番俺らしい。笹原さんがそんなことを言い残し東京に帰って行った。彼も一緒だ。千里さんら幹部との会合が終わったら那和さんを連れて福島(こっち)に帰ってくることになっている。 彼が側にいないのは寂しいけど、僕には子供達や紗智さんがいるから、寂しいなんて言ってられない。 それに家族も同然の大切な組員たちもいる。 ふぅ・・・・・ 目を閉じてゆっくりと深呼吸をした。 記憶を失う前に住んでいたという自宅は、目の前に聳え立つビルの最上階にある。組事務所もここにある。 日曜日が祝日で月曜日が振替休日、火曜日が幼稚園の創立記念日で四連休になり、その初日の土曜日にみんなで帰省した。 物々しい雰囲気が漂うビルの出入口の前には、黒ずくめの服を身に付けた男たちがずらりと並んでいた。 静かに停まった車へと一斉に頭を下げられた。 「姐さんお帰りなさい。元気そうで良かった」 低く、落ちついた声で言いながら外からドアを開けられた。 面喰らって唖然とする僕とは対照的に、子供達にとっては見慣れた景色なのか驚いている様子は全くなかった。 「ママ、ゆげさんに、よしざきさん、みんなママのみかただよ」 一太が一番奥にいた二人の男性に笑顔で駆け寄っていった。

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