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番外編 幸せの色

度会さんがスマホを操作し見せてくれた。 白髪まじりの壮年の男性と茶髪の若い女性が仲良く腕を組んで写真に写っていた。 一見すると孫とお祖父ちゃんにしか見えないけど……… 「本部から回ってきた手配書だ」 度会さんのその言葉で、男性が秦蒼甫さんで、女性が今行方不明になっている人だと気付いた。 女性は茶髪で臍が見える短めのTシャツと、長い脚を見せつけるようにミニスカートを身につけ、爪には何やらネイルアートを施していた。 その女性に申し訳ないけど、見た目で判断しちゃいけないのは分かっているけど、小さい子供が二人いるとは到底思えなかった。 「未知、この女性に見覚えがあるか?」 蜂谷さんに聞かれて首を横に振った。 「そうか。親父たちにもこの女性が客として来てないか聞いたが、化粧を落とした姿でペンションに来ていたとしても全く気付かないよ。そう言われた。まぁ当たり前だがな」 クスリと蜂谷さんが自嘲した。 「あの、女性のことを聞いてもいいですか?」 「あぁ、笹原には乾リカと名乗っていたようだが、秦には安井カオルと名乗っていた。その他にも幾つかの名前を使っていたみたいだ。もともと渋谷円山町界隈で風俗嬢をしていた。どういう経緯で歌舞伎町に流れ着き、秦のイロになったか、詳細は 不明だ。こういうとき玉井がいたら、すぐに見付けることが出来るのにな」 蜂谷さんが悔しそうに上唇を噛み締めた。

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