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番外編 幸せの色
度会さんがなぜか笑いを堪えていた。
「何か変ですか?」
「いやな、遥琉の子供達の子守りがすっかり板についたなって………おっと誤解するなよ、悪い意味で言ってる訳じゃないからな」
「子守りはしたくてしているんです。ですから苦にはなりません。たいくんのパパは、たいくん達よりもママに夢中ですからね。ちょっと目を離すとすぐ悪さしますし」
橘さんの背中におんぶされ、うとうとと船を漕いでいた太惺が、指をしゃぶりながらようやく眠りはじめた。
「なぁ、橘。一度聞こうと思ったんだが、柚原との子供、欲しくないのか?遥琉よりも焼きもちの裕貴も渋々だが優真を息子として迎えた。千里も家裁の許可がおりればだが、二人を養子に迎えるつもりでいる」
「私は誰も養子に迎えるつもりはありません。私には未知さんがいますし、紗智さんや那和がいます。それに子供達より何倍も手のかかる甘えん坊の彼もいますし、十分幸せです」
子守唄を口ずさみながら、パソコンが置いてあるディスクに向かうと、立ったまま操作をはじめた。
「どうした橘?」
「カレンさんの供述調書を閲覧できないか、担当した国選弁護人にダメ元で頼んでみようかと思いまして。何か手がかりが見付かるかも知れません」
「そうか、じゃあ儂は遥琉と千里に電話をするか」
「度会さん、くれぐれも余計なことは言わないでくださいよ」
「分かってる」
二度、三度と念を押され、顔をしかめながらもスマホを耳にあてがう度会さん。
二人の邪魔にならないようにそぉーと事務所を出た。
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