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番外編 幸せの色

紫さんが腕によりをかけて作ってくれたアップルパイに舌鼓を打つ一太と遥香と紗智さん。 「そうか、これが頬っぺたが落ちるくらい美味しいって言うんだ」 「そうよ。日本語が上手になってきたわね」 紫さんに褒められて、頬を赤らめ、はにかむような笑顔を見せる紗智さん。 「ごめんなさいね」 「いいえ、大丈夫です」 弓削さんら幹部に捕まらないようにわざと遅れて到着した鞠家さんだったけど、すぐに弓削さんに見付かってしまい、面貸せやと首根っこをむんずと掴まれて事務所にそのまま連れていかれた。 お酒が入って盛り上がっている頃じゃないかしら。紫さんがそんなことを口にしていた。 「高行、黒竜のこと詳しいし、それにバーバの側にいるから、みんな話しが聞きたい。それ分かる。でも………」 そこで一旦言葉を止めると、腕の中ですやすやと眠る心望に目を落とした。 「バーバや橘さん柚原さん以外の他の男と仲良く話す彼見てて、胃が絞めつられて、息がくるしくなった」 唇をぎゅっと結んだ。 「他の男に嫉妬するくらい鞠家が好きなのね」 「ち、違うから」 顔を真っ赤にして必死になって否定する紗智さんを、紫さんは温かい目で優しく見守ってくれていた。

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