848 / 3637

番外編 姐さんの弾よけは俺だ!

「姐さん、大変です‼」 若い衆が息を切らしドタバタと駆け込んできた。 「寝ている子供がいるのよ。静かにしなさい」 紫さんに注意され、 「すみません」 しゅんとして(こうべ)を垂れた。 「で、何が大変なの?」 「地竜(ディノン)の直属の部下だと名乗る(ファン)という男が姐さんに会わせて欲しいと下で騒いでまして」 「もしかして俺の出番か?」 颯爽と上着を羽織ながら柚原さんが姿を現した。 黒竜と当局に隠れ家を急襲され、咄嗟の判断で黄さんらを逃がした地竜さん。 「日本に行け。妻を炎竜や茂原から守ってくれ頼む。そう言われたらしい」 「彼は不死身だ。大丈夫だ。そう言ってる」 紗智さんと鞠家さんが黄さんの言葉を訳してくれた。 「姐さんの弾よけは俺だ」 ガタンとドアが開いて、鳥飼さんが右足を引き摺りながら事務所に入ってきた。 「おぃ鳥飼、まだ動ける身体じゃないはずだ」 「こんな大変なときに俺だけのうのうとしているわけにはいかない」 手を貸そうとした柚原さんに、 「大丈夫だ。一人で歩ける」 そう言うと黄さんの前で立ち止まった。 「地竜から言われたのはそれだけじゃないはずだ。違うか?」 鋭い目付きでジロリと見下ろした。 しばらく睨み合ったたのち、クスリと黄さんが自嘲した。

ともだちにシェアしよう!