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番外編 姐さんの弾よけは俺だ!
「齋藤、最後まで待たせて悪かった」
度会さんが姿を見せた。
「どうした?」
怪訝そうに顔をしかめた。
「彼女に失礼なことを言ってしまいました。本当にすみません」
平身低頭し謝られた。
「未知は儂の娘だ。そんなことでいちいち目くじらを立てないよ」
男性が良かったと独り言を口にし、安堵のため息をついた。
「紹介が遅れてすみません」
男性が名刺を差し出した。おずおずと受け取って、名刺に目を通すと、東京に本社がある出版社の人だった。
「三日後に発売される週刊誌に、渋谷円山町の料亭を隠れ蓑にした、政府高官と外務省官僚を相手にした性接待の記事が掲載されることになった。黒竜が便宜を図ってもらうため、その見返りに女性を斡旋していた」
男性が帰ったあと、テーブルの上のコーヒーカップを片付けていたら、度会さんにそう言われた。
「彼女もその一人だった。捕まえるためじゃない。黒竜に二度と利用されないよう、一刻も早く見付けてやらないと」
「警視庁のいわゆるキャリアと呼ばれている幹部も接待を受けていたみたいですよ」
橘さんの耳にもそのことは当然ながら入っていた。
『サツに持っていっても恐らく上の指示で揉み消される。日本のサツも中国と同じだ。マスコミに流せ。そう指示された』
黄 さんが言っていた言葉の意味がようやく分かったような気がした。
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