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番外編 頑なな心をとかすのは

『七海だろう。ちょっと待ってろ』 しゅんとした声が返ってきた。 「まずは茂原さんの事が先です」 橘さんが話を元に戻そうとしたときには鷲崎さんじゃなく、七海さんに変わっていた。 『ハルちゃんにフラれてかなり凹んでいるから、代わりに俺から話す。ハルちゃんちょっと待ってられるかな?』 「うん!」 『お利口さんだね。鷲崎のおじちゃんのこと、あとでいい子、いい子してあげてね』 「はぁ~い、ハルちゃんわかった」 遥香がスマホを橘さんに「はい、どーぞ」と渡した。 『仙台市内の繁華街にある飲食店のオーナーが、行きつけのバーで働いている男が手配書の男に酷似している。他人の空似かも知れないが、そう言って彼に相談を持ち掛けたのが一週間前です。鷲崎組(うち)の幹部が常連客として毎日バーに通い、本人と接触し、手配書にある男にほぼ間違いないと確認しました。若衆が彼の勤務先とアパートに張り込んでいて、いつでも捕まえられる態勢になっています』 「鷲崎さん、だいぶ変わりましたね。荒くれものの、一度キレたら手の付けようがないゴンタだった彼が・・・・」 『遥琉と度会さんのお陰かな。生き残るためにはカタギの旦那衆との協力が必要不可欠、金にならなくても人の為に尽くす労力を惜しまない。二人に言われた言葉が彼を変えたのかも知れない』 そこで一旦止めると、電話の向こう側からクスリと笑う声が漏れてきた。

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