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番外編 頑なな心をとかすのは

一瞬だけ寂しそうな表情を浮かべる紗智さん。でも…… 「高行さん、待ってるから。ちゃんと頑張ってきて」 元警察官だっただけに鞠家さんの顔は広い。だから仙台にも知り合いの警察官がいてもおかしくない。 紗智さんは菱沼組の幹部の妻として、夫を影で支える覚悟を決めたのだと思う。 「高行さんは鷲崎さんと七海さんを守る。俺はマーを守る。ほら、早く行って。時間がないよ」 だからわざと明るく振る舞い、笑顔で鞠家さんを送り出した。 七海さんと何の会話をしているのかな? 遥香はずっとニコニコと笑ってお話をしていた。 「おじちゃん、いいこ、いいこ。だから、すぐ、ぶすくらないの」 思わず飛び出したその一言に、橘さんたちがぷぷと、噴き出しそうになり、慌てて口元を押さえていた。 「まさか2才児に宥められるとはな………」 鞠家さんと入れ違いに事務所から戻ってきた柚原さんが苦笑いを浮かべていた。 「鷲崎さん、あんだかんだといって、子煩悩ですからね」 橘さんと紗智さんとにお世話してもらい、お利口さんにしてご飯を食べていた太惺が急にグズリだした。 つられて心望も。 「たいくんとここちゃん、おじちゃんってよんでる」 そんなことを言われたら、鷲崎さん嬉しくて泣いちゃうかも知れない。 「覇気が下がらないといいですね」 「はきって?」 意味が分からずきょとんとする紗智さん。 「少し難しかったですね。覇気とは」 橘さんから意味を教えてもらうと遥香に「おじちゃん、がんばれって、ハルちゃん言ってあげて」と小声で声を掛けた。 「うん、わかった。おじちゃん、がんばれ!がんばれ!ハルちゃんのぶんもがんばれ!」 微笑ましくも可愛らしい応援がはじまった。

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