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番外編頑なな心をとかすのは

まだ夜も明けきっていない早朝4時すぎに、伊澤さんが突然事務所を訪ねてきた。これから仙台に向かい、鞠家さん、鷲崎さんらと合流するみたいだった。 「明後日に発売される週刊誌が世に出るまで茂原を何としてでも守らないといけない」 すべての責任は上司である自分にある。茂原はいいように利用されただけだ。 伊澤さんは刑事を辞める覚悟を決めていた。 「未知、卯月から聞いたぞ。たく、きみという子は…………お節介やきは播本に似たのか?」 「でしゃばるような真似をしてごめんなさい」 「褒めているんだ。謝る必要はない。未知、見ないうちに姐さんらしくなってきたな」 伊澤さんが肩を軽くポンポンと叩いてくれた。 「何で鞠家がデカを辞めて、卯月の用心棒になったか、何で昇龍会じゃなく、龍一家でもなく、縣一家もなく菱沼組だったのか。ようやく分かったような気がした。ここにはみんなを温かく見守るマーという名前の女神がいる。どんな逆境にも困難にも立ち向かう強い女神が…………未知、きみに会えたことを誇りに思う。年も年だ。もう未練はない」 「伊澤!」 息を切らし駆け付けたくれた度会さんが声を震わせた。 「くれぐれも自棄を起こすなよ」 「分かってるよ。今生の別れみたいな湿気た顔をするな」 ゲラゲラと豪快に笑いながら度会さんに少し大きめのの茶封筒を渡した。 「悪いが、次に会うまでこれを預かってくれないか?なぁに、たいしたもんじゃねぇよ」 それだけ付け加えると慌ただしく仙台に向かった。 「何がたいしたもんじゃねぇだ。たく相変わらず素直じゃねぇんだから」 度会さんがやれやれとため息をつくと、スマホを耳にあてがった。

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