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番外編 頑なな心をとかすのは

誰かと会話をしてからその茶封筒を渡された。 「自分に万が一のことがあったら渡すことが出来ないから、先に渡しておいてくれ、まぁ、そういうことだ」 度会さんに言われて封筒の中を覗き込むと、のし袋が二枚と可愛らしいキャラクターが描かれたポチ袋が4つ入っていた。 「これって・・・」 「あぁ、出産祝いと、一太の入学祝い、それと子供たちの小遣いだろう。遠慮することはない素直に貰っておけ」 「僕、伊澤さんにありがとうを言えなかった」 それが心残りで、悔し涙が一筋零れ落ちた。 「ヤツはあぁ見えて、意外とシャイなんだ。面と向かってありがとうを言われたら恥ずかしくて見せる顔がねえだろ、恐らくそう言うはずだ」 心の中で伊澤さんに感謝の気持ちを繰り返しながら、封筒を両手でぎゅっ、と抱き締めた。 二本松に帰る準備をしながら、鞠家さんや鷲崎さん伊澤さん達の事が心配で、何度時計を見たか分からない。 一太が幼稚園を卒園するまであと半月あまり。 一太と遥香は、実の孫のように目に入れても痛くないくらい可愛がってくれる惣一郎さんと和江さんと別れるのが寂しいみたい。僕も二人と同じ。別れが辛いし、離れて暮らすのが寂しい。 でも・・・・・・ こんな僕を姐さんと呼んでくれる、若い衆や幹部の皆さん、それに鳥飼さんや黄さんがいる。 だから我が儘を言ってる場合じゃない。彼と力を合わせて家族と、組のみんなを守らないと。

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