863 / 3281

番外編頑なな心をとかすのは

太惺と心望がお昼寝をするのを待って、一階に移動をはじめた時だった。 スマホの着信音が鳴り出したのは。 ズボンの後ろポケットに片手を入れスマホを取り出す橘さん。抱っこ紐でおんぶしている心望をよしよしとあやしながら片手でスマホを操作した。 『橘』 この声は………鞠家さんだ。 「茂原さんは?」 『まぁ無事…………かな?』 漏れ聞こえてくる鞠家さんの声は疲れ果てていた。 「高行さん」太惺を抱っこした紗智さんがスマホに向かって話し掛けた。 『紗智か?心配しなくても大丈夫だ。みな、無事だ』 「そんな訳ない。高行さん、嘘つくの下手。そのくらい知ってる」 紗智さんが珍しく声を荒げた。 「白昼、仙台市内の住宅街で銃撃戦。抗争勃発か?速報流れた」 まさに寝耳に水だった。 驚いて橘さんを見上げると、 「ちょうどお昼ご飯をみんなで食べていたときです。未知さんはたいくんと、ここちゃんにご飯を食べさせていて気付いていないようでしたので、柚原さんや紗智さんには黙っておくように私から頼んだんです」 「そんな………」 声が震えた。 『伊澤が体を張って俺達を守ってくれた。度会の知り合いに匿って貰っているから………大丈夫だ…………安心しろ』 苦しげな声で途切れ途切れに話す鞠家さん。 紗智さんは心配そうにじっと耳を傾けていた。 「鷲崎さんは?」 『鷲崎か?ヤツは………』 電波が悪いのかノイズ音が邪魔して声が聞き取れなかった。そのうちツーツーと電話が切れてしまった。 すぐにリダイアルを押したけど繋がることはなかった。

ともだちにシェアしよう!