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頑なな心をとかすのは

一階でエベレーターを下りエントランスに出ると、殺気立った物々しい雰囲気に包まれていた。 警官と組のみんなが道路を挟んで睨み合っていた。 「昇龍会直参の鷲崎組と菱沼組が、密輸して売りさばいていた違法薬物の分け前を巡り対立。抗争勃発か。サツが、自分の都合のいいように発表しやがった。オヤジが不在なのをいいことに好き勝手言いやがって」 弓削さんが忌々しいとばかりに唇を噛み締め吐き捨てた。 「橘、柚原、姐さんと子供達を連れて裏口から出ろ。吉崎と会長が待機している。車が用意されてあるから、それで二本松へ向かえ」 「組のみんなを置いて、僕だけ逃げるなんて出来ない」 首を横に振った。 「橘、柚原、紗智。姐さんと子供達を連れて行け!!早く!!」 弓削さんが声を張り上げた。 「伊澤が言っていただろう。ここにはマーという名の女神がいるって。姐さんはみんなのマーだ。例え散り散りなっても、オヤジとマーが生きてさえいればどうにかなる。さすけねぇ」 「弓削さん………」 さすけねぇは福島の方言で大丈夫だ。の意味。滅多に使わない言葉をあえて口にした弓削さんの想いに胸が張り裂けそうになった。 「未知さん行きましょう」 「マー行こう。一太くんもハルちゃんもちゃんと手を繋いで。ぱぱたんの手を絶対に離しちゃダメだよ」 橘さんと紗智さんに急かされ、後ろ髪を引かれる思いで何度も振り返りながら裏口に向かった。

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