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番外編 頑なな心をとかすのは
「混乱するのも無理ないな。順を追ってちゃんと説明する。一太、おいで。話しがある。橘、未知たちを車の中に」
鷲崎さんはそう言うと一太の前にしゃがみこんだ。
「なぁ一太、明日と、もしかしたら次の日も幼稚園を休むことになるがいいか?一太の大切な家族と、惣一郎さん、和江さん、それに幼稚園の友達を守るためなんだ。わかってくれるか?」
一太の顔を覗き込み、諭すようにゆっくりとした口調で話し掛ける鷲崎さん。
一太はじーーと瞳を見詰め話しに耳を傾けていた。
「パパがいないときは、いちたがママやハルちゃんたちをまもる。パパとゆびきりげんまん、やくそくした。だからいちた、みんなをまもる」
大きな声で堂々と言葉を返した。
「偉いぞ、一太」
鷲崎さんに褒めれて、恥ずかしいのか顔を真っ赤にしていた。
志田浜の駐車場を出発して30分後。湖を一望出来る高台で車が急に止まった。
「明後日までここに身を隠す。ここは度会の知り合いが所有する別荘だ。といっても普通の一戸建てだがな」
「鷲崎さん、鞠家さんたちは?無事なんですよね?」
橘さんは車から下りるなり、すぐに運転手席のドアを開け、鋭い眼差しで鷲崎さんに詰め寄った。
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