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番外編 頑な心をほぐすのは

一太がテーブルに皿を並べている間、遥香が箸とスプーンをみんなに配って歩いた。 「おじちゃん、ななちゃん、いたいって」 七海さんの膝の上にゴロンと横になり甘えていた鷲崎さんを、頬っぺたをこれでもかと膨らませ睨み付けた。 「あぁ」 欠伸をしながら生返事した鷲崎さんに遥香が、 「まずはおへんじ。はぁーいでしょう」 むっとして言い返したものだから、 ちょっと遥香‼ 慌てて娘に駆け寄った。 ごめんなさい。頭を下げ謝った。 「別に怒っていない。むしろ楽しい。なぁ七海」 「えぇ」七海さんが大きく頷いた。 「遥琉、いつもこんな感じで橘に怒られているのかなって。ハルちゃん見ててそう思う」 「ままたんそっくりだ」 二人は愉しげに笑っていた。 「お前ら、先にメシを食べろ」 鷲崎さんが回りにいた舎弟たちに声を掛けた。 「オヤジが先に食べてください」 「俺はあとでいい。龍成と外でちぃと煙草を吸ってくる。龍成、面貸せ」 椅子に座りカレーを一口、口に運ぼうとしていた龍成さん。スプーンを置いてすぐに立ち上がった。 組長の言うことは絶対。居候の身ならなおさら従うしかない。 「幹部や若衆は、飲まず食わず、ほとんど寝ずに警備に当たってますからね。鷲崎さんなりの気遣いなんでしょうね」 「昔と比べてかなり丸くなった。たいくんに跡目を継がせるまで何としてでも組を守るってかなり意気込んでいたから」 七海さんが橘さんの背中ですやすやと眠る太惺の頭を優しく撫でてくれた。

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