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番外編 頑な心をほぐすのは
「橘、未知と紗智と先にご飯を食べてて。彼のところに行ってくる」
「七海さん怪我をしているんですから、あまり動かない方がいいと思いますよ」
「ありがとう橘。でも………」
そこで言葉を一旦止めると、窓の外に視線を向けた。
「彼と龍成、めちゃくちゃ仲が良くて、煙草の火もあぁやって2人で付け合って。俺といるより龍成といる方が楽しそうだし。だからかなりムカつく」
唇をぎゅっと一文字に結ぶと、表情を強張らせ鷲崎さんと龍成さんの所へ向かった。
「何をそんなに驚いているんだ?」
「七海さんが焼きもちを妬くところ、初めて見ました」
「そうか?」
柚原さんがどさくさに紛れて然り気無く橘さんの手を握り締めた。
「柚原さん」
「俺だってしょっちゅう焼きもちを妬いているんだ。七海だって焼きもちを妬くだろうよ」
その日の夜。
浴室からは鷲崎さんと一太のはしゃぐ声が聞こえていた。
太惺が鷲崎さんから離れなくて。ギャン泣きされ一緒にお風呂に入れてもらっている。
遥香と心望は紗智さんと七海さんに遊んでもらいながら、橘さんにお風呂に入れてもらうのをお利口さんにして待っていた。
ずっと気になっていたことを勇気を出して聞いてみることにした。
「あ、あの……七海さん」
機嫌が直っていなかったらどうしよう。
びくびくしながら声を掛けてみた。
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