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番外編 頑なな心をとかすのは

「ん?何?」 「夕方のニュースで、鷲崎組の事務所に県警が踏み込んだとき、すでにもぬけの殻、がら~として何もなかった。そう言ってたのを聞いたの。鷲崎さんが連れてきた人達以外の組の皆さんは?みんな無事なんですよね」 吉柳組も合流しかなりの大所帯になったって彼が話してくれたのを何故か急にふと思い出した。 「未知・・・・・きみは・・・・」 目を丸くして驚かれた。 「他所の組の事を心配している場合じゃないのは分かってます。でも、組のみんなは家族も同然だから。心配で心配で・・・・・」 「ありがとう未知」 七海さんがにこっと柔らかな笑みを返してくれた。 「今から三ヶ月前、鷲崎は、ガラの悪そうな連中に、うちの店でホステスとして働かないかとしつこく付きまとわれていたある女性を助けたんだ。そのあとその女性に頼まれ、鷲崎は若衆をボディーガードに付けた。女性から金を払うと言われたが、鷲崎はキッパリと断った。数日後、女性の父親が礼を言いに事務所を訪ねてきた。聞いて吃驚したよ、彼は県警の刑事だった。鷲崎の懐の広さ、人柄に惚れ込んだみたいで、借りた恩を仇で返すわけにはいかないと、県警の情報を鷲崎に提供するようになった。だから今回の件も早い時点で県警の動きが分かっていたから、ひそかに事務所を移し、組のみんなは九条組の世話になっているから大丈夫。心配くれてありがとう」

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