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番外編 頑な心をほぐすのは

彼かと思って画面を見たら鞠家さんからだった。 『・・・・・・ありがとう・・・・・・』 ボソッとそれだけ言うと電話が切れてしまった。もしかして茂原さん?リダイヤルを押そうとしたらちょうど着信があって、 「茂原さんですか?」 って電話に出たら、 『夫の声も忘れたのか?』呆れたような声が返ってきた。 「ごめんなさい」謝ると、 『未知のお節介やきは茨木さん譲りだからな。でも、妊娠中だってことをくれぐれも忘れるなよ』そう釘を刺された。 『あれこの声?もしかして未知?』 『違う。絶対に違う』 甲高い声が電話の向こう側から聞こえてきた。間違いない。千里さんの声だ。 『ちょっと酷いんじゃないの?』 『何が酷いんだ』 言い争う二人の声を聞いていたら、 『マー』 那和さんが電話に出た。普段より声が弾んでいる。 「元気そうだね」 『バーバと千里と心のお陰。明日・・・・・じゃない、今日だ。バーバと帰るね』 「気を付けてね。黒竜《ヘイノン》がどこにいるか分からないし、それに警察にも目を付けられているから」 『バーバがいれば百人力?ん?千人力?日本語よく分からないけど千里が言ってた。マーこそ気を付けて』 「ありがとう」 那和電話を切ったら許さねぇぞ! 彼が声を荒げた。 「そんなに怒らなくても。ねぇ」 『本当』 クスクスと電話越しに笑い合った。

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