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番外編 二人の母

『ねぇねぇお化粧濃くなかった?ルージュも控えめの色にしたんだけど、やっぱり派手めの色の方が良かったかしら?』 録画してあるものをみんなで見ようとしていたら当の本人から電話が掛かってきた。 「まだ見ていないのに聞かれても答えようがないだろう」 『ちょっとお兄ちゃん!それ酷くない?』 「そうか?」 そのとき和江さんがリビングに入ってきた。 「千里さんはいつ見ても可愛いわよ。お化粧も薄化粧で着物にすっごく似合っていたわ。ルージュもネイルも控え目で、千里さんの魅力を更に引き立てていたわ。そうそう惣一郎さんが惚れ直したってすっごく興奮していたわよ」 ニコニコと笑いながらスマホに話し掛けた。 『あらやだ、もう。惣一郎さんたら。ダーリンに焼きもち妬かれちゃう』 和江さんに可愛いと褒められたのがよほど嬉しかったみたいで電話の向こう側の千里さんの声は弾んでいた。 ねぇねぇ、おねえちゃん。 幼い子供の声が漏れ聞こえてきた。 ダメだよ。ママ、電話しているから。 笹原さんの声と、赤ちゃんの泣き声も聞こえていた。 「二人の名前決まったの?」 『それがまだ、なの』 「そう。上の子はおいって呼ばれていたんでしょう。赤ちゃんはそれ。戸籍もなければ名前もない。ゴミのように扱われて。こんどこそ幸せになれるめんごい名前をつけてあげなきゃ」 「千里、この際だから、和江さんと惣一郎さんに名付け親になってもらったらどうだ」 『うん、ダーリンに相談してみる』 後ろの方から千里、大変だ。笹原さんが助けを求めていた。 いきなり二人のパパになったんだもの。 おしっこを漏らしたでわたわたして、オムツ交換でゆるゆるのうんちにオロオロするのも無理ない。 笹原さん、新米パパさん頑張れ。 千里さんは子供達をいつも見ててくれているから、多少のことでは動じない。すでにベテランママだ。

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