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番外編 二人の母

組事務所を取り囲む警察官と押し掛けたマスコミが互いに一歩も譲らず押し問答をしていた。怒号が飛び交い辺りが騒然としているところから再生が始まった。 そこへ秦さんら幹部を引き連れ姿を現したのが千里さんだった。 「ご近所さんには小さい子や赤ちゃんがいる家庭、体調が優れなくて自宅で静養しているお年寄りがいる家庭があるのよ。少し静かにして頂きませんか?協力出来ないならお引き取りください」 静かな怒りを孕んだその声に一瞬、場が静寂に包まれた。 「アタシが昇龍会組長、笹原千里よ。逃げも隠れもしないわ。言いたいことがあれば言えばいい。聞きたいことがあれば聞けばいい。サツは報道の自由いつから取り締まるようになったのかしらね。他にもやることがあるんじゃないの?」 皮肉たっぷりに口にすると警察を痛烈に非難した。 警察が監視する中、マスコミからのインタビューに一つ一つ丁寧に答える千里さん。 30代の若さで、しかも女性として初めて組長に登り詰めた千里さんに対し、初めこそバカにしたような好奇の眼差しを向けていた記者のみなさんだったけど、女性としての何気ない細やかな気配り、言葉使いにみなさん心酔し聞き惚れていた。 千里さんが本当は男性だってこと、恐らく誰も気が付いていない。女性だとみんな思い込んでいる。

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