はじめは数えるくらいしかいないかったのにSNSで拡散したのか野次馬が集まり出した。これ以上ご近所さんに迷惑を掛けるわけにはいかないと、千里さんがこれでもう宜しいですか？そう言ってインタビューを終わろうとしたまさにその時だった。辺りが急に騒がしくなった。 人の波を掻き分け、警察官の制止を振り切り現れたのは………。 橘さんの手が音もなく伸びてきて、テレビの電源をオフにした。 恐らく一太や遥香には見せたくない内容だったんだとおもう。 だって千里さんの前に現れた女性が安井カオルさん。チラッと見ただけど間違いなく彼女だったから。 子供たちを千里さんに奪われたと、一方的に逆恨みして襲撃を企てたのかも知れない。秦さんや腕の立つ人が回りをしっかりと固めているから、その場で取り押さえられ、警察に引き渡された。 そうであってほしい。 だってこれ以上罪を重ねてほしくなかったし、それに警察に捕まれば黒竜に利用されることもない。 「遥琉も本部のナンバー２として千里と共にインタビューを受ける予定だったんですが」 そこで一旦言葉を止めると、子供たちに目を向けた。 「プライベートを丸裸にされ、未知さんのことを面白おかしくネットに書き込む輩が出ないとも限らないからと、千里が一人で受けることにしたみたいです。遥琉と那和さん、無事に福島駅に着いたみたいですよ。こっちに向かっているとさっき、メールが入りました」 「パパとなおさんかえってくるの？」 「えぇ」 「やった！ハルちゃんよかったね、パパたちかえってくるって」 彼がこっちに向かっていると聞いて、一太も遥香も満面の笑みを浮かべ、目をキラキラと輝かせていた。