886 / 3637
番外編 生きてさえいれば
「变色龙は地竜と同じで不死身だ。そう言ってる。四六時中、寝るときも彼と一緒だから、何となくだけど言葉が分かるようになった」
黄さんを庇うような仕草を見せる鳥飼さんに、鷲崎さんニヤニヤしていた。
「ちょっと待て!誤解するなよ、そういう変な関係じゃないぞ。オヤジがしっかり見張っとけって言うから………俺は未知一途だ」
冷や汗をかきながら必死に否定する鳥飼さん。
黄さんは相変わらず無表情だったけれど、ほんの一瞬だけ、気のせいかも知れないけど、口元が綻んだような気がした。
安井カオルさんがどうなったのか怖くて誰にも聞けなかった。
僕は彼女に比べたら恵まれている。
こんな半人前の、それこそ橘さんや紗智さん那和さんがいないと子育てもろくに出来ない、ダメダメな母親でも、子供たちは、ママ、マーって呼んでくれるんだもの。
生きててほしい。
生きてさえいればいつか子供たちと再会出来る日がきっと訪れるはずだから。
それから数時間後。
彼が那和さんと帰ってきた。
パパ、なおちゃんおかえり‼
大喜びで玄関まで駆けていった一太と遥香だったけど・・・・
二人してしばらく固まったのち、
「たちばなさんたいへん‼パパうわきしてるよ‼」
「しらないおんなのひと」
すぐに戻ってきて、僕じゃなくて橘さんに助けを求めた。
「それならみっちりお仕置きしないと駄目ですね」
橘さんは何故か笑っていた。
理由を聞くと、
「怪しまれないようにわざとカップルを装おって帰ってきたのでしょう。でも、逆に目立って怪しまれるような気もしますがね」
橘さんが彼を迎えに行こうとしたらドアが開いた。
ともだちにシェアしよう!