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番外編 生きてさえいれば
「黒竜か?」
黄さんは首を横に振った。
「大方、サツだろうよ」
鷲崎さんが七海さんを伴いリビングに入ってきた。
「サツが駆け付けたとき、追突された車が路上にそのまま放置され、誰も乗っていなかったそうだ。騒動の渦中にある菱沼組の組長が行方不明か?ってちょっとした騒ぎになってるからな」
「▲○△×○」
黄さんが中国語で言葉を返した。
「变色龙 は不死身だ。そう言ってる」
鳥飼さんがすぐに訳してくれた。
「鳥飼、お前、いつの間に中国語を………」
これには彼も那和さんも舌を巻いていた。
「橘、仕事だ。遥琉、お前はおとなしくしてろ」
菱沼組の顧問弁護士、それが橘さんの仕事。
柚原さんが上着を肩に羽織らせると腕を通し、ありがとう。にっこりと微笑み返すとぴんと背筋を伸ばし襟を正した。
「鷲崎さん、龍成さん、行きますよ」
いつもとは違うキリリと引き締まった顔つきになると、二人を引き連れ外に向かった。
万が一のことを考え、橘さんも鷲崎さんたちも防弾チョッキを常に着用している。
サツだからといって信用するな。
信用していいのは、蜂谷と伊澤だけだ。
彼や鞠家さんが言っていたことをふと思い出した。
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