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番外編恋う(おもう)
「女みたいにウジウジしやがって。はっきりしない男は大っ嫌いだ。なぁ鳥飼、黄と未知、どっちにするんだ。男ならハッキリしろ‼ケジメを付けろ‼」
煮え切らない鳥飼さんに鷲崎さんがわざと声を荒げた。
自分の命、人生をすべて賭けて僕を想ってくれる゛一途で優しいひと゛。
だからこそ誰よりも幸せになって欲しい。僕の為に人生を無駄にして欲しくない。
「黄、包帯・・・・・巻いてくれ」
しばらく黙り込んでいた鳥飼さん。
静かにそう口にした。
その一言で黄さんの表情がみるみるうちに明るくなっていくのが分かった。
黄さんの笑った顔を初めて見た。
鳥飼さんに名前を呼ばれただけで、こんなふうに嬉しそうに笑うなんて。
鷲崎さんが手をすっと離すと、その手首を掴み自分の方に引き寄せた。
「卯月さん頼みがある」
那和さんが黄が発した言葉を訳してくれた。
「おぅ、なんだ」
「鳥(ニィァォ)に弾よけじゃなくて、違う仕事を与えて欲しい」
それを聞いて橘さんがピンと来たみたいで、クスリと笑っていた。
色恋沙汰についてはちょっと鈍感な彼。言葉の意味を理解するまで少し時間がかかった。
「それとこれは関係ないだろう」
「あのねバーバ、男心が分かってない。鳥飼はマーが好きなんだよ。自分に振り向いてくれた鳥飼を、恋敵であるマーの側に置いときたくないの」
「なるほどな」
那和さんに言われ、ようやく理解した彼。手をポンと叩いた。
「あのな遥琉・・・・・」
これには橘さんと鷲崎さん、呆れていた。
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