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番外編 恋う(おもう)

状況が落ち着いたら鳥飼さんを度会さんに預けることにした。 まずは火傷の怪我を治すことを最優先に、その先のことは幹部の皆さんと話し合って決めることにしたみたいだった。 はぁ~深いため息をつきながら、窓の外の景色をぼんやりと眺める彼。 恋敵(ライバル)が一人減って、嬉しいというより、張り合う相手がいなくなって寂しくなったみたいだった。 今の今まで菱沼組の姐さん一筋だったあの鳥飼に彼女が出来たと、あっという間に広がった。 早速聞き付けた千里さんが電話を寄越してくれた。 「こんな状況だし、その……」 『それはそれ。これはこれ。でしょう。ねぇ未知、鳥飼の彼女って?』 「えっと…………」 正直に言うべきか悩んだ。 彼女じゃなくて彼氏だって。 「もしかして千里?」 那和さんが東京を発つときに送った荷物が無事に届いて、紗智さんや子供達と段ボールの箱を開けていた那和さんが、 「彼女じゃないよ。千里」 くすくすと笑いながらスマホに向かって話し掛けた。 『え?…………』 それからしばらくの間、千里さん固まっていた。 『そっか……でも良かったんじゃないの。相手は?』 「黄っていう男。地竜のボディーガード。全然笑わないの。すぐ睨むしめっちゃ怖い」 『そうなんだ。まぁね、当人同士がいいなら、アタシらが何を言っても無駄だし。あとは、場をわきまえていちゃつくように鳥飼に釘をさしておかないとね。未知、大丈夫?』 千里さんもかなり動揺しているみたいで声が微かに震えていた。 『まぁ、鳥飼のことだから、睦には絶対に言わないと思う。だから、未知から話してあげて』 「でも………」 躊躇し言葉を詰まらせた。 『睦はね、鳥飼が幸せになるのを誰よりも望んでいるのよ。だから未知の口からちゃんと伝えてあげて』 「うん、分かった」

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