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番外編 心望の初節句
「マーそっとしておいて」
「一太くんが卒園するまであと二週間。マーを穏やかに過ごさせてあげて」
那和さんと紗智さんが頭を下げてくれた。
「分かったよ。茂原の話しはもうしない。それでいいだろう?湿っぽい話はこれで終わりだ」
「良かった」二人ともほっとして胸を撫で下ろした。
「おぃ地竜‼」
ちょうどそこへ柚原さんが怒り心頭の様子で姿を現した。
「お前の手下と黄が駐車場で揉めている。近所迷惑だからさっさと止めさせろ」
「みんな血の気がやたらと多いからな。困ったものだ」
やれやれとため息をつくと、すっと静かに立ち上がった。
「もうじき一歳か。早いものだな」
太惺と心望を怖がらせないように、そぉーと近付くとにっこりと微笑み掛けながら頭を撫でてくれた。
あーうー
二人もニコニコの笑顔で返した。
「まさに癒しの天使だな」
目を細め二人を見詰めると、サングラスを掛けて、柚原さんと一緒に駐車場へ急ぎ足で向かった。
紗智さんと那和さんが鋭い視線で辺りをぐるりと見回した。
「黒竜、どこに潜んでいるか分からない」
「警備が手薄になった隙を狙われたら一貫の終わり」
一太と遥香に急いで園舎に入るように声を掛けた。
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