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番外編 心望の初節句

「ごめんね、おうちから雛飾りを持ってこれなかったから、お兄ちゃんが作ってくれた雛飾りで我慢してね」 「だいじょうぶだよママ」 幼稚園からペンションに帰ると、ちらし寿司やケーキなど、和江さんが腕によりをかけて作ってくれたご馳走がテーブルに所狭しと並べてあった。 「わぁ~すごい!」 これには一太も遥香も大喜び。 「お帰りなさい一太くん、ハルちゃん。お昼まだだからお腹空いたでしょう。パパと橘さんの分はちゃんと取ってあるから、たくさん食べてね。あっ、その前にインフルエンザが流行っているからうがいと手洗いをしてきてね」 笑顔で出迎えてくれた和江さんに二人とも大きな声で返事をしてばたばたと競うように洗面所に駆けていった。 「しかしまぁ、困ったものね」 和江さんがチラッと窓の外に目を遣るなり深いため息をついた。 「好きだから付き合うんだから、ほっといてあげればいいのに。組織を抜けるってやっぱり難しいのかしら」 「いろんなしがらみがあるんだよ。ギャングもヤクザと同じ縦社会だからな」 竹刀を握り締めた惣一郎さんが入ってきた。 「地竜には、ご近所さんに迷惑を掛ける前になるべく早くここから離れるように頼んだ。しかしまぁ、二人が付き合うことになったと聞いたときはたまげたぞ」 「すみません………本当はもっと早く言うべきだったんですが……」 「何事にもタイミングってあるからな。謝らなくていい」 睦さんに電話を掛けた時、すぐ近くに惣一郎さんがいるとは思わなくて。 鳥飼さんが黄さんと付き合う事になったと話しをしていたら、冗談だべ、吃驚しすぎて唖然としていた。

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