「ディ～～ノン～～てめぇ、何しに来やがった！」 それから数分後。 息を切らしながら彼が急いで帰ってきた。 駐車場をうろつく見慣れない男達に眉をしかめ、自分に似たもう一人の男性と対面し、僕の膝枕で嬉しそうに顔をスリスリしながら横になる地竜さんを見てイライラが頂点に達した。 「卯月、そうかっかするな。胎教に悪い」 「は？」 地竜さんは気にする素振りを全く見せなかった。 二人の口喧嘩はいつものことで、一太と遥香は然程気にせず皿にこんもりと盛られたちらし寿司を美味しそうに頬張っていた。 「サツに目を付けられていることくらい分かっている。当局からも国賊として追われていることも。だが、俺は一太と男の約束を交わした。反故になど出来ない」 地竜さんはどんな圧力にも屈せず、確固たる意志と信念のもとにギャングとして生きていく事を決心していた。 「卯月、愛しい愛人(アイレン)にもう二度と会えないかも知れないんだ。少しぐらい甘えさせてくれないか？」 「地竜お前…………」 「黄（ファン）と变色龙（ビエンソーロン）は共に有能な部下だ。俺のためなら喜んで死ぬだろうよ。だが、将来有望な二人を犬死にはさせたくない。だから、お前に託したい」 地竜さんがドアの前に立っていた二人を手招きで呼んだ。 でも二人とも腕を前で組み憮然として、返事すらしなかった。