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番外編 心望の初節句
「俺の側にいたんでは絶対に不幸になる。卯月のもとで本当の幸せを探せ」
カメレオンさんを諭すように肩をポンと軽く叩くと、一太の隣の椅子に座った。
「愛人 にも会えたし、可愛い子供達にも会えた。30分後、ここを発つ。久し振りの祖国の飯だ。どれ食べるか」
こんもりと盛られたちらし寿司のお皿を手に持つと、子供達が唐揚げを箸で摘まみ一つずつその上に乗せた。
「おなかすかないように、いっぱいたべてね」
「ありがとう一太。ハルちゃんもありがとう」
もうそれだけで目がうるうると潤んでいた。
どんなに強くても、彼と同じで子供たちの前では優しくて子煩悩な地竜さん。
生涯の伴侶と巡り会い、今よりももっともっと幸せになって欲しい。そう願わずはいられなかった。
食事を済ませると、僕のところにゆっくりと歩み寄ってきた。
「ママを頼むな」
おなかを優しく擦られた。
「てめぇー、俺の未知に気安く触るな!」
彼がむすっとして唸り声を上げた。
「俺の?未知はみんなの未知だ。独り占めは許さない」
地竜さんは彼に焼きもちを妬かれても全く動じなかった。
「你是我最爱的人
(ニー シー ウォ ズイ アイ デァ レン)」
(あなたは私が一番愛する人です)
両手をかかげもたげられて、チュッと手の甲に軽く口づけをされた。
「~~!!」
飛び掛かろうとした彼を柚原さんが必死で止めた。
橘さんは紗智さんと那和さんに通訳を頼み、黄さんとカメレオンさんと立ち話をしていた。鳥飼さんはというと、心配そうに黄さんの顔を何度も見ながら事の成り行きを見守っていた。
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