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番外編 カメさん
地竜さんが帰り、入れ違いに鞠家さんが帰ってきた。事務所に寄り度会さんや弓削さんに状況を説明してきたみたい。
もうマル暴の刑事じゃなくなった伊澤さんは東京には帰らず、しばらく度会さんのもとに身を寄せることになった。
地竜さんの置き土産であるカメレオンさんを無言で睨み付ける彼。
見れば見るほどそっくり。誰だって見間違う。でもそれが彼には面白くないみたいで。
「正体も知らねぇ野郎を信用しろと?ふざけるな」
凄みをきかせカメレオンさんに迫った。
はぁ………根負けしたカメレオンさんがおもむろに顎に手を掛けた。
「○△×▲△○」
ぶつぶつと独り言を口にしながら、びりびりと顔の皮を剥がしはじめた。
やがて顔の皮が全部剥がれ全く違う顔がその下から現れた。
年は30才くらい。
艶のある黒髪と色白な肌。どこか愁いを帯びた目尻の下がった目元。
一瞬女性かと間違えるくらい綺麗なひとだった。
右頬からこめかみにかけてナイフで切られたような傷跡がくっきりと残っていた。それを一切隠すことなく彼と向き合った。
一番驚いたのは彼より鳥飼さんだと思う。
愕然としてしばし放心状態になっていた。
「こんな中年のおっさんより、カメレオンの方が可愛いだろうに………年だって………」
「カメレオンより鳥《ニィァォ》の方が何倍も可愛いって」
「適当な事を言うな」
通訳してくれた那和さんを鋭い眼差しで睨み付けた。
「嘘じゃない」紗智さんが助け船を出した。
黄さんが鳥飼さんに声を掛け、然り気無くその手に自分の手をそっと絡めると、ギュッと握り締めた。
俺を信じろ……そう言っているように見えた。
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