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番外編 カメさん
カメレオンさんは彼と橘さん達の前に進むと、ヨロシク、オネガイ片言の日本語でそう口にすると腰を九の字に曲げて頭を下げた。
「お前を受け入れる条件は、まず一つ、人前で大声を出して黄と痴話喧嘩をしない。二つ、黄の女房は鳥飼だ。それをちゃんと認めること。三つ、未知やこども達を命に代えても守ること。四つ、子供達の前では怖い顔をしない。カメレオンと黄。お前らに笑えと言っても無理だろうから、まずはそのおっかない表情をどうにかしろ」
カメレオンさんは眉一つ動かさず那和さんの通訳に耳を傾けていた。
そして何度も大きく頷いていた。
「笑うな、感情は捨てろ。そう命じられていたみたい。なるべく笑うように努力するって。顔が怖いのは元々だからそれは許してくれって。あと…………え?嘘?」
那和さんが驚きの声を上げた。
「ちょっと黄‼」
那和さんが烈火の如く怒り出した。
「どうした?」
普段は滅多に怒らない那和さん。
彼も橘さんも驚いていた。
「あのねバーバ、35日前までは付き合っていたみたいだよ。黄の方から一切の説明なく一方的に別れを切り出されたみたい。僕がカメレオンの立場だったら、絶対に許さないよ。10年近く契兄弟だったら尚更。ふざけるなだよ」
「とんだとばっちりだな」
「そうですね」
「はた迷惑な連中だ」
「まぁそうですけど、カメレオンさんの気持ちも分からない訳じゃありませんよ。私も15年近く誰かさんを愛し、すべてを犠牲にして尽くしましたが、最後はあっさりと捨てられましたからね」
「は?」
耳の痛いことを橘さんにズバリと言われ、返す言葉もなく黙り込んでしまった。
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