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番外編 カメさん

「35日前に別れた、黄さんの言葉を信じましょう。傷付くのは鳥飼さんです。ちょっと遥琉、聞いてますか?」 橘さんが声を荒げた。 「はい」びくりと背を震わせ背筋を伸ばした。 別れたあともいつも一緒。今もこうして尻に敷かれている彼。 なんだかんだいいながらも仲がいい。 そんな二人が羨ましかった。 こども達はカメレオンさんが怖いみたいで………鳥飼さんをいつも睨み付けているからかな?きっと。 何となく距離を置いてまず顔をじぃーと観察をしてから、そろりそろり、おっかなびっくり近付くものの、やはり怖くなってすぐに戻ってくる。 今まで人見知りをしなかった太惺と心望もジロリと無表情で見下ろされて、怖くてギャン泣きする始末。 「もう泣かなくていいんだよ」 太惺と心望を代わる代わる抱っこし、てんてこ舞いになりながらあやしていたら、 「姐さんすみません」 鳥飼さんがすっと前に歩み出て、太惺を抱き上げてくれた。 「あれでも彼らは笑おうと頑張ってる。許して欲しい」 背後に黄さんの刺すような視線を感じて、ちらっと後ろを振り返ると、憮然として直立不動する黄さんと目が合った。 エヘヘ、顔がひきつっていたけれど笑って誤魔化した。 「睦さんに連絡をしてくれてありがとう」 「え?あ、う、うん」 なるべく黄さんと目を合わせないようにしたけど、怒られていると思ったのかギャーギャーと更に火が付いたように心望が泣き出した。 「黄!」 鳥飼さんが注意すると、ゴメン、片言の日本語が返ってきた。

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