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番外編 カメさん

「これは鶴と亀だ。日本では縁起がいいとされている」 器用な指さばきであっという間に鶴と亀を作って見せた彼。 カメレオンさんは目を丸くして繊細な指の動きに見とれていた。 「カメレオン、今日から亀になれ。余所者の、しかも地竜の影武者だったお前を信用するな。黄と一緒に今すぐ地竜に返せって幹部連中に口を揃えて言われた。だが、一度引き受けたからには最後まで面倒をみるのが筋ってものだろう。亀は厄介者じゃなく、縁起がいい。カメレオンどうだ?」 カメレオンさんは微動だにせずただ黙っていた。 「なぁ、紗智。中国語で亀って何て言うんだ?」 「ウーグウイ」 「ウーグ………ウイ?それじゃあ呼び方が難しくて子供たちが気軽に呼べねぇじゃないか。ちなみに聞くが鶴は?」 にわかに始まった中国語講座。 一太と遥香は興味津々。 何がそんなに面白いのか笑い転げていた。 「お兄ちゃんとお姉ちゃん楽しそうだね」 太惺と心望をあやしながら二人に話し掛けた。 う~ん、しばらく悩んでいた彼だったけど、 「カメレオンがウーで、黄がフーでどうだ?」 「バーバ、そのまんま」 クスクスと声を出して紗智さんが笑いだした。 「仕方がないだろう」 二人のやり取りを眺めていたカメレオンさんが急にフフと笑ったものだから、一太と遥香がびっくりして目を丸めていた。今まで感情を一切表に出さなかったからなおさら。 「何だ笑えるんじゃねえか」 ホッとしたのか彼の表情が和らいだ。 鳥飼さんが黄さんに「名前、今日からフー」身振り手振り必死になって伝えていたけれど、納得出来ないのか不満そうに唇をつまんでいた。 「不服か?」 彼が黄さんをジロリと睨み付けた。 鳥飼さんに「黄、返事」と言われ慌てて首を横に振った。

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