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番外編 俺の、愛しい人

あれ? 炎竜さんからかなり離れた場所に、見上げるくらい背の高い大男が仁王立ちで立っているのに気が付いた。 まるで能面みたく寡黙で無表情で、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。 あの人と、どこかで会ったような……… 記憶を手繰るもやはり思い出す事が出来なかった。 「あれ?ダオレン……?そうだよダオレンだよ。地竜の右腕だった。何で炎竜と一緒にいるの?」 那和さんが驚きの声を上げた。 「那和さん、僕、彼と会ったことがあるような気がしてならないんです」 「あっ、えっと………」 もしかして聞いちゃまずいことを聞いちゃったかな。 なんともいえない気まずい空気が流れた。 「隠して置いてもいずれ分かることですから、未知さんに教えてあげてください」 橘さんが那和さんに優しく声を掛けた。 「うん、分かった。あのね、マー」 太惺と心望が生後1ヶ月のとき、一太と一緒に地竜さんに連れ去られたときのことを教えてくれた。 「僕は取り返しのつかいないことをした。ごめんね」 「ううん、教えてくれてありがとう」 那和さんを元気つけようとわざと明るく振る舞った。 「ダオレンが炎竜の側にいるってことは………ちょっとヤバイかもしんない。橘さん、駐在さんに連絡した方がいいかも」 那和さんの目付きが険しくなった。 「ウーもフーもダオレンの存在にいち早く気付いたからバーバを安全な場所に避難させた」 「那和さん、どういう意味ですか?」 「えっと………あのね…………」 怯えたように目を伏せてしまった。

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