925 / 3639
番外編 俺の、愛おしい人
「那和、俺のことを呼んだか?」
カタンとドアが開いて彼が病室に入ってきた。ママ!遥香も彼の手を離し、元気いっぱいニコニコの笑顔で駆け込んできた。
「バーバ、いつからいたの?」
「いつからって、ついさっきだ」
さっきのことを彼に知られちゃかなりまずい状況になるからか、愛想笑いをしながら平静を装っていた。
「お兄ちゃんは幼稚園?」
「うん!」
「もう少しで卒園式だね。いつだっけ?」
「18日だ。しっかりしてくれよ」
彼に苦笑いされてしまった。
ごめんなさい。えへへ、笑って誤魔化した。
「あっ、そうだ」
橘さんに言われたことをふと思い出した。
「子供会に入るか、入らないかだろ?俺のお袋は親父がヤクザだってひた隠しにしていた。未知と一太を他の保護者が受け入れてくれればいいんだが、今は親の方が強いからな、モンペって呼ばれている連中もいるみたいだから、無理して入る必要はないんじゃないか?送り迎えはみんなで手分けしてすればいいじゃないか。俺だって協力出来ることは何でもするつもりだ」
「遥琉さんありがとう」
「いちいち礼はいらない。顔の傷・・・・残らないといいんだが。ごめんな、ちゃんと守れなくて」
彼の指がおっかなびっくり頬に触れてきて、指の腹でそろりと撫でられた。
ううん、遥琉さんが悪いんじゃないよ。にこっと微笑んで、首を横に振った。
ともだちにシェアしよう!