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番外編 俺の、愛おしい人

「未知さん、具合はどうかしら?あら、卯月さん」 厚海先生が颯爽と姿を現した。 「妻が大変お世話になっています」 彼が慌てて姿勢を直した。 「ちょうど良かった。ドアの前にいるお巡りさんはまぁ仕方ないとして、二人の男性達どうにか出来ない?」 「すみません。二人とも未知の護衛をやるといってきかなくて。他の入院している患者やその家族の迷惑にはならないように気を付けます」 「ここは……」 「公立の市民病院です。初診日に先生と約束したことは守ります」 「分かっているならいいわ」 先生が聴診器のイヤーピースを耳にあてた。 「さっきからぽこぽこお腹を蹴って、すごく元気な子ね。もしかしたら心音が聞こえるかも」 「はい」上着をたくし上げようとしたら、先生が二人に聞こえるようにわざと咳払いをした。 「すみません、診察が終わるまで外で待ちます。ほら遥琉も」 「えぇ!心音を聞きたいのに!」 「えぇ、じゃありません」 橘さんに首根っこをむんずと掴まれ、そのまま半強制的に廊下に連れ出された。 「もしかしたら早く産まれるかも知れないわね」 おなかに聴診器のチェストピースをあてながら先生が話し掛けてくれた。 「お腹は重いし、少し動いただけで息が上がるし、下が見えないから靴も履くのだけで一苦労だし。こんなにも大変だとは思わなかった」 「ベテランママでも敵わないものがあるのね」 先生が笑っていた。 「未知さんの主治医になれたことを誇りに思うわ」 「僕の方こそありがとうございました」 ぺこりと頭を下げた。そしたら先生が急に涙ぐんだ。

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