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番外編 俺の、愛おしい人
「姐さん」「姐さん」
口々に僕の名前を口にしながら雪崩れ込んできたのは菱沼組の舎弟の皆さん………部屋住みや事務所当番、カバン持ちの若い衆の皆さんだった。
「姐さん、オレらがいながらお守りすることが出来ず、すみませんでした」
一斉に腰を九の字に曲げ、頭を下げられた。
「あっ、えっと、その……」
久し振りだからかな?あまりの迫力に面食らってしまって、何をどう返していいか戸惑ってしまった。
「お前らの気持ちはありがたくもらっておく。病院の迷惑になるからさっさと撤収しろ」
彼もまさか若い衆のみんながお見舞いに来るとは予想外だったのかかなり驚いていた。
みんなが帰ったあと、厚海先生に平謝りをしていた。
そしてその日の夜、面会時間終了の8時ギリギリに、彼に隠れるように弓削さんがこっそり、様子を見に来てくれた。
「いい加減、身を固めろってオヤジも会長もうるさいんだ」
はぁ~と深くため息をつくと丸い椅子に腰掛けた。
「姐さんが選んでくれないか?」
スーツの胸ポケットに手を入れると、3枚の写真を手渡された。
「みんな、可愛い人ばっかり」
「顔だけはな、でもな……」
そこで言葉を止めると、もう一回ため息をついた。
弓削さんって確か………
あぁ、そうだ!思い出した。
心さんが好きだったんだ。
心さんみたいな女性を探せばいいのかな?
それとも………顔を上げてチラッと横顔を盗み見た。
弓削さんも寡黙で口数が少ないから、何を考えているか分からない。
「もしかして………好きな人とかいるんですか?」
おっかなびっくり切り出した。
「いるわけないだろう。いたら見合いなんかしない」
否定されたけど声が震えていた。目も合わせてくれなかった。
どうやら図星の様だった。
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