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番外編 俺の、愛おしい人

看護師さんと黄さん……じゃない、フーさんだっけ?ウーさんだっけ?名前が似ているから紛らわしい。どっちがどっちだか分からなくなる。 二人に体を支えてもらい何とかベットに横になることができた。 「念のため先生にみてもらいましょね」 看護師さんが枕元にあったナースコールのボタンを押してくれた。 「あ、あの……」 長身の男性二人に「今、何をした?」と言わんばかりに無表情でジロリと見下ろされ看護師さんの顔から血の気がさぁーと引いた。 一人でも怖いのに二人いっぺんだもの。 無理はない。 「先生を呼んでくれただけだから」 言葉が通じないもどかしさを抱えながら、身ぶり手振り二人に説明をした。そして看護師さんには「ごめんなさい」と謝ることしか出来なかった。 「あら?ずいぶんと可愛らしい人達ね」 床に散らばった写真を厚海先生が一枚ずつ拾ってくれた。白衣を脱いでいたから、帰宅するところだったのかも知れない。 「未知さんが好きな子?な訳ないか」 「ごめんなさい、お仕事が終わったのに呼び出してしまって」 「さっきから謝ってばかりね。私はあなたの担当医よ。気にしないで。あら、どうしたの?」 「いえ、何でもないです」 慌てて首を横に振った。初めて見る看護師さんが一緒だったから。何気に目が合って、ほんの一瞬、鼻でせせら笑われたような気がした。 ウ―さんもフーさんもその事にすぐに気が付いたみたいで、看護師さんに声を掛けようとしたけど、すぅといなくなってしまった。 「先生、彼女は?」 「あぁ、鈴木さんの事かしら?今まで外来にいたんだけど、病棟勤務になったの。彼女がどうかした?」 「いいえ、何でもないです」 先生に変に思われたかな? 愛想笑いをして何とか誤魔化した。

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