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番外編 俺の、愛おしい人
「それと、颯人も来てるぞ」
鞠家さんが扉を指差した。
「フーと二人きり……じゃないが、まぁ、積もる話もあるだろうから、しばらくそっとしておいてやったらどうだ?」
通訳に那和と紗智、二人の護衛に柚原さんがいるから、まぁ、大丈夫だろうって鞠家さん。
「卯月さん、検温の時間ですよ」
噂をすれば影がさす、まさにその通りで。
鈴木さんが回診用のカートを押しながら病室に入ってきた。
ほんの一瞬。
時間にして数秒。鞠家さんを鋭い目付きで睨み付けた。
でも何事もなかったようにすぐに穏やかな笑みを浮かべると、彼や七海さんに挨拶し軽く会釈をしていた。
「あれ、さっき別の看護師が検温をしていきましたけど」
彼が彼女に揺さぶりをかける為か、わざと嘘をついた。
「あら、そうだったんですか?」
鈴木さんは彼の出方をあらかじめ予想していたのか、顔色一つ変えず、カートから点滴のパックを取り出した。
「今朝、松井さんっていう看護師さんに交換してもらったばかりですけど……」
「交換するように先生の指示がありました」
「そうなんですか」
彼の顔をチラッと見上げ首を横に振った。
「決して疑う訳ではありませんが、厚海先生にもう一度確認していただけませんか?」
彼が鈴木さんに声を掛けてくれた。
元刑事だけあって鞠家さんは勘が鋭いし、鼻が利く。何かに気付くとウーさんに目で合図した。
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