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番外編 俺の、愛おしい人

「随分とあっさり引き下がったな」 「殺そうと思えばいつでも簡単に始末が出来る、まぁそういうことだろう。卯月、ウー、女が触れたものに一切触るなよ」 そう言いながら鞠家さんがスマホを耳にあてがった。 「ハチ、すまないが至急、鑑識を連れてN市民病院に来てくれ。ここにいるサツは信用できない」 用件だけ手短に伝えるとすぐに電話を切った。 そのあと、ポケットから使い捨てのゴム手袋を取り出すと手に嵌めながらウーさんに中国語で何かを指示した。 「遥琉さん?」 「盗聴器がどこかにあるはずだ。まぁ、俺らは邪魔しないように大人しくしていよう」 彼が隣に腰を下ろしてきて、ギュッと手を握りしめてくれた。 鞠家さんが、鈴木さんが押してきた回診用のワゴンを念入りに調べると、無造作に置いてあったボールペンの中に小型のカメラが隠されてあるのが見付かった。 この病室に誰がいるか確認をするため意図的にわざと置いたんだろうって彼が話をしていた。 コンセントを念入りに一つ一つ確認していたウーさんが何かに気付き、彼や鞠家さんに目で合図をした。 「どうやら見付かったようだ」 「遥琉さん」不安げな眼差しで彼を見上げると、 「大丈夫だ。心配するな」 にこりと優しく微笑んで頭を撫でてくれた。

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