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番外編 俺の、愛おしい人
マグカップを握り締め、背凭れにもたれ掛かった。
震えながら一つ深呼吸をして、耳にしたものを頭で整理しようと、激しくまばたきをした。
「未知」
何度か名前を呼ばれてはっとして顔を上げると、子供たちを寝かし付けていた彼が心配そうな表情でドアの前に立っていた。
「遥琉さん、僕のせいだ……僕はやっぱり疫病神なんだ」
今さら後悔しても遅い。
零れ落ちそうになった悔し涙をぐっと堪えた。
「未知のせいじゃない。君は疫病神なんかじゃない」
あっ、この声の主は確か……
「ごめんなさい」
彼の背後からぬっと姿を現した蜂谷さんに頭を下げた。
「何で君が謝るんだ。頼むから頭を上げてくれ」
「だって」
「君は本当に不思議な子だ。つくづくそう思うよ。こんな目に遭わせた玉井を憎むのが普通だろう」
「憎むだなんてそんなこと出来ない。だって玉井さんも茂原さんもやむにやまれない理由があったんだもの。僕はこうして生きてる。おなかの子もすくすく成長している。だから人を恨んだり、憎んだり、もうそんなのしたくない」
「未知、君は……」
彼と蜂谷さんは目を見開き驚いていた。
紗智さんと那和さんにも、マー強いねって言われてしまった。全然そんなことないのに。
「玉井にその言葉を伝えておくよ。ありがとう」
蜂谷さんが安堵したように胸を撫で下ろした。
「なぁハチ。この際だからタマと付き合ったらどうだ」
「は?」
紗智さんを迎えに来た鞠家さんの爆弾発言に怪訝そうに眉を寄せる蜂谷さん。
「意外とお似合いだと思うんだ。遥琉もそう思うだろう」
「頼むから俺を巻き込むな」
鞠家さんに話を振られ、面倒なことに巻き込まれる前にそそくさと寝室に戻っていった。
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