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番外編 俺の、愛おしい人

「蜂谷さん」彼と入れ違いに橘さんが部屋に入ってきた。 「わざわざ鞠家と同じ事を言いに来たのか?」 不満を口にし語気を強める蜂谷さん。 「私は無理やりあなた方をくっ付けようとは思っていませんよ」 「じゃぁ何をしに来た?」 「真沙哉さんと那和さん、尊さんと青空(そら)さん、それに茂原さんと炎竜のことをつぶさに見てきて何も思わないんですか?感じないんですか?そこまであなたが冷徹な人だとは思いませんでした」 滅多な事では彼以外の人を叱ったり怒ったりしない橘さんが珍しく声を荒げた。 「俺に何をしろっていうんだ?」 「それは……」 「このバカ息子‼それも分からないのか?」 惣一郎さんがドタドタと入って来て蜂谷さんを怒鳴りつけた。 「玉井の側にいてやればそれでいいんだ。黙って愚痴を聞いてくれる人が側にいる、どんな時も何があっても味方になってくれる人が側にいる。それが玉井にとって人生をやり直す力になる。橘から玉井は天涯孤独の身だって聞いた。儂ら家族で玉井を支えてやろうじゃないか」 諭すように話し掛けるとぽんぽんと軽く肩を叩いた。 「怒鳴ったりして悪かったな」 それだけ言うと何事もなかったように部屋から出ていった。 「親父……すまない」 蜂谷さんは肩を震わせながら、惣一郎さんの背中に向かい深々と頭を下げた。 「鞠家、橘、俺が悪かった。許してくれ」 「いいんですよ。分かって頂ければそれで」 橘さんがゆっくりと微笑んだ。 「それじゃあ、ついでに」 「鞠家さん。余計なことは言わなくていいですよ」 橘さんが鞠家さんを睨み付け、脅すように釘をさした。

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