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番外編 俺の、愛おしい人

「しかしまぁ、こんだけ賑やかなのによく寝ていられるな。たいしたもんだ」 「うん、そうだね」 一太は布団をまた蹴飛ばし大の字で熟睡していた。全く起きる気配がない。 彼が太惺を抱き上げると、下唇をこれでもかと伸ばし、火が付いたようにフギャー、フギャーと涙を溢しながら泣き出した。 「おぃ太惺。パパなのに何で泣くんだよ」 これには彼もおろおろして、困り果ててしまった。 「顔が怖いんですよ、あなたは」 「は?鷲崎よりはマシだ」 家中に響く泣き声に橘さんがすぐに駆け付けてくれた。 「たいくん、おいで」 橘さんが太惺を抱っこし、ポンポンとお尻を軽く叩きながらあやすと、ピタリと泣き止んだ。さすがままたん。子供たちを泣き止ませるのは朝飯前だ。 「バーバ、たまに怖くなるからじゃないの?おいでここちゃん」 橘に続いて姿を見せた那和さんが心望を抱っこし、あやしはじめた。 「オヤジは姐さんしか眼中にないから、たいくんが一丁前に焼きもちを妬いたんじゃないのか?ハルちゃん、ぱぱたんっておいで」 そして遅れて姿を現した柚原さんが目を腫らし泣きじゃくる遥香を抱き上げてくれた。 「遥琉」 「は、はい!」 橘さんにジロリと睨まれ、びくっと肩を震わせた。 「未知さんによからぬことをしようとしていませんよね?」 「あっ、たりまえだ」 動揺しまくって声が裏返った。 「ならいいです。くれぐれも未知さんに無理をさせないようにしてくださいね。たいくんたちは私たちで面倒をみますので、未知さんをゆっくりと休ませてあげてくださいね。遥琉、私の話しをちゃんと聞いてますか?」 橘さんの目は笑っていなかった。 「はい、聞いてます」 彼の言う通りだ。 角が一本じゃなく、三本生えている。 勝ち目がないと早々に白旗を上げた彼。すぐに謝っていた。

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