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番外編 俺の、愛おしい人
退院してから丸2日。
なぜか怖くて近付けなかった窓におっかなびっくりだけど近寄れるようになった。
窓を開けようとしたら、ウーさんが足音を立てずにさぁ~と駆け寄ってくれて。
外を警戒しながら代わりに開けてくれた。
「ありがとうは、えっと……ウーさんシェ シェ」
恥ずかしいのか咳払いをされた。
さっきまでたいして感じなかった、ひわの声が柔らかく、幾重にも重なって聞こえてきた。
鶯《うぐいす》の鳴き声も透き通る水滴のようだった。
「たく、困ったもんだな」
「颯人が心配するのも無理ない」
彼がやれやれとため息をつきながら、鞠家さんと連れ立ってリビングに入って来た。
颯人さんは、鳥飼さんとフーさんが付き合うことにいまだ難色を示していた。
相手がまず信用出来ない。
本当に鳥飼を愛しているのか?
通訳をしてくれた鞠家さんと紗智さんに、矢継ぎ早に質問を投げ掛けかなり困らせていたみたいだった。
「鳥飼は睦の親代わりだ。睦は、苦労を掛けさせた分幸せになってほしいと願っている。颯人も一緒だ。フーは鳥飼だけを一生涯愛し、そして守り抜くと俺達の前で誓った。潮時、かも知れないな」
彼が寂しそうに真っ白な雪の帽子を被る安達太良の山を見上げた。
「もともとは敵同士だった。それが、未知を巡って火花を散らすようになって…………なんだかんだといって、鳥飼には助けられた。これからの人生、カタギとしてフーと一緒に穏やかな生活を送れるように出来ないか、度会さんと弓削に相談してみようと思う」
「だんだん播本に似てきたな」
「そうか?」
「あぁ」
「△◁◇▲×○」
それまで黙って控えていたウーさんが二人の会話に突然割って入った。
怒ったような口振りだったけど、怒っているのか怒っていないのか、表情一つ変えないから、いまだによく分からない。
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