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番外編 俺の、愛おしい人
ちょうどそこへ一太がやって来た。左側に彼、右側に橘さん。仲良く二人と手を繋ぎはしゃいでいた。
さっきまで気まずかったのに。また、重苦しい空気が漂い始めた。
「俺ら何かしたか?」
「したみたいですね」
彼はいまいち状況を飲み込んでいなかったけど、橘さんは柚原さんの表情を一目見るなりすべてを悟ったみたいだった。
「一太くんも座って下さい。ほら遥琉も」
二人を椅子に座らせると、柚原さんの隣の席に腰を下ろした。
「一丁前に焼きもちを妬いて……なかなか可愛いですね」
憮然とする柚原さんの頭をよしよしと撫でた。
「あたちは?」
「ハルちゃんも可愛いですよ」
にっこりと優しく微笑むと遥香の頭もなでなでしてくれた。
「ままたんだっこ」
遥香に抱っこをせがまれ、チラッと伺うように柚原さんの顔を見た。
「娘にまで焼きもちを妬く親はいない」
「そうですね」
橘さんが遥香を抱っこすると、柚原さんが体を橘さんにピタリと寄せて、腰に手を回した。
「あなたまで甘えん坊になってどうするんですか?」
「たまにはいいだろう」
「たまにはっていつもでしょう」
喧嘩してもあっという間に仲直りした二人に、彼や鞠家さん、和江さんや惣一郎さんも苦笑いするしかなかった。
紗智さんと那和さんは顔を見合わせ笑うのを必死で堪えていた。
ドアの前に無表情で立っていたウーさんが、橘さん達を見て、隣にいたウーさんに一言、二言、短く言葉を掛けていた。気のせいかもしれないけど、一瞬だけ表情が緩んだ様に見えた。
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